大河ドラマ『べらぼう』では、大名跡(みょうせき)「瀬川」を継いだ花魁「花の井」を、1400両もの大金(約1、4億円とも言われる)で身請けする鳥山検校が登場する。鳥山の職業は高利貸し。
さて当時、江戸幕府は盲人への福祉事業も兼ねて、ある種の職業集団制度を設けていた。「検校」とはその中の最高官位で、その下に、別当、勾当、座頭が続く。彼らは、地歌などの平曲を作曲する(盲人による)音楽家集団としても有名だった。
先日当ブログに上げた、箏曲『新娘道成寺』の作曲者は菊岡検校とも石川勾当とも言われているのだが、いずれにせよ盲官によるもの。吉原での鳥山検校登場シーンでは、有名な箏曲『六段の調べ』が流れ、箏を演奏する手元も映ったが、あの曲も八橋検校(近世箏曲の祖)によるものだ。演出にもその辺が巧妙に絡ませてあったのだ♡
私が弾いた感触では「残月」などの峰崎勾当作品も好きだ。箏曲などの古典芸能には盲官による作曲が多いため、検校、勾当などのことは音楽の点から知っていた。
箏曲の宮城道雄先生(1894-1956)は盲目だが、やはり耳の感度は鋭かった。(資格団体としての呼称で「宮城検校」とも呼ばれていたという。)
当時、宮城宗家でのお稽古は、曲の仕上げの時だけ直々に先生に聞いていただけるシステムだったらしいが、1950年代のある時、直弟子だった母が弾いた後、「今日はここに来る前に、何か重いものでも持ったのかな?」と優しく指摘されたという。その日は前に部屋の掃除か何かをしていたらしく確かにご指摘通りで、箏の音に重さを感じられたのだろう。その感性の鋭さに恐れ入ったという。
でも、あくまでニコニコ穏やかな道雄先生なのでした。
だが今回の『べらぼう』で、音楽界隈だけでなく高利貸し業でそれほどまでに裕福だった「検校」がいたとは! と初めて知りとても驚いた。
「検校」などに対するイメージが少し変わったなww
作中、鳥山検校は目は見えないけれどむしろそれゆえに耳が良く、感性も鋭い。一方の「瀬川(花の井)」を演じる小芝風花さんは声も綺麗で、その点でもこの役にピッタリ!
きっと鳥山検校は、その品のいい声にも瀬川にホンモノを感じたのだろう。
史実では悪徳高利貸しのヴィランとして伝わる鳥山検校なのだが、少なくともドラマの中の瀬川の前ではワルではいないで欲しい と切に思う!
この鳥山検校を演じる市原隼人さんは、大河『鎌倉殿の13人』の八田知家役の時に惹きつけられてから、注目している俳優さんだ。
私がTVで『べらぼう』を見ていた時、吉原のお座敷シーンの鳥山検校をちょうど見かけた息子が「お、イケメン!」と一言残して通り過ぎたw
この市原検校は、カラコンを入れ、僧侶のように剃髪した独特の容貌なれど、かように充分な魅力を放っているのは流石だ‼︎
鳥山検校という難役に挑む市原さんの怪演に、今後ゾクゾクすることになりそうだ♡
市原さんは川崎市在住(生まれも!)で、サッカーJ1川崎フロンターレの始球式(キックインセレモニー)で蹴ったことがある。見事一発でキックイン!
その時も、(イケメンでも)飾らない親しみやすさがあったのよ♡
追記、同じく第8回ネタバレ注意〉
作中、地本問屋の鶴屋(風間俊介さん)が、吉原の忘八の駿河屋さん(高橋克実さん)から、階段を突き落とされるシーンがあった。
吉原を蔑む物言いの(江戸市中の)鶴屋に対し、(吉原の) ‘忘八‘ 連中が上段から見下ろして一人一人タンカを切っていく場面は、ちょっと胸のすく思いだったし、映像の画角もキマッていたね!
まさしく「張りと意気地の吉原」の真骨頂だった。
ルパンファミリーのアウトレイジ感を思わせるものがあって、カッコよかったね♡