箏曲の小品集に『大蛇退治』という曲がある。手習いの時期の比較的簡単に弾ける曲だ。私も6〜7才の頃、初めて弾いたように思う。
大河ドラマ『べらぼう』で、花魁(おいらん)「瀬川」を身請けした高利貸しの鳥山検校は市原隼人さんの快演でも話題となったが、「検校」を最高位とする盲人の職業集団には邦楽演奏者もあって、蔦重より少し後の時期に「葛原勾当」と呼ばれる地歌箏曲家がいた。やはり「勾当」も「検校」に連なる盲人職業集団の位の一つである。
そして、そのお孫さんに当たる葛原しげるさんは童謡作家として宮城道雄小品集のかなりの曲の歌詞を書いており、この『大蛇退治』も彼の手になる歌詞なのだ。なお、この神話の舞台は出雲国(いずものくに)だ。
♪ おそろしや おそろしや
八岐(やまた)の大蛇(おろち) おそろしや(*)
頭が八つ 尾が八つ
ほおづきみたいな真っ赤な目玉
背中に檜の木(ひのき) 杉の木しげり
(*refrain ) ♪
昔、母のお弟子さんが家でこの曲を練習していたら、男の子のいるご家庭の方では「面白い!」という反応、女の子のいるご家庭では「怖〜い!」という真逆の反応だった というエピソードがある!私はと言えば、歌詞が歌詞だけに当時これを弾くのがちょっと恥ずかしかったかなw
でも、一番印象に残っているフレーズは「背中に檜の木 杉の木茂り」のところだった。2番の歌詞では、大蛇を退治する素戔嗚尊(すさのおのみこと)が登場するのだが、人間と似たような体格のスサノオが大蛇と戦うにしては「相手には檜や杉の木が生えてるってどういうこと??」とその大きさに、想像を絶したものだww
そこで素戔嗚尊は一計を案じ、強いお酒を八甕(かめ)用意して大蛇に飲ませ、酔わせたところを退治。人身御供(ひとみごくう)になっていた櫛名田比売(くしなだひめ)を救い、結婚した♡
TVで、埼玉県の氷川神社(ご祭神の内の二柱は素戔嗚尊と櫛名田比売)の神主さんの話をちょうど聞き合わせた時、「八岐大蛇は川のたとえである」とのことだったのでHPを見てみたら、その辺のことがより詳しく書いてあった。
(或いは、一帯の土地や自然までをも含む説あり。)
大雨で濁流となり流路も変わるような暴れ川なら「八岐大蛇」って感じだし、檜や杉の木が生える規模だよね!つまりは治水成功ってことね。納得‼︎
なお、スサノオが退治した大蛇の一つの尾から、見事な「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」が出てきたという話は有名です!
ちょっとした教養の一片に、どうぞ♡