ルパン三世 & something

大好きなルパン三世、他、色々なことを気ままに綴ってます♡

『べらぼう』の題字 by 書家 石川九楊さん/『銀座百点』

大河ドラマ『べらぼう』の始まりのタイトルロールの中に、「題字 石川九楊」とあるのに目が留まった。元々、この字、可愛いなあ という印象はあったのだ♡


書家で書道史家でもあられる石川九楊(きゅうよう)さんの書は、以前から好きで注目していた。氏は、もちろんどんな書体でも書けてしまう大家だが、この『べらぼう』の文字は、楽しくなるような遊び字だ。
ここの『う』の文字は、普通なら鰻屋さんにあるような縦長の『う』にしがちだろうが、そうではない理由は、「この場合の発音が『お』に近い為、その口を開いた形に似せた」という。そういうところまでよく考えられていて、確かに何か喋りかけてくるような戯けた(おどけた)感じがするのだ♡
また、副題『蔦重栄華乃夢噺』の方の字体は、「蔦重」が人名であることから、「署名風」に工夫されたという。


吉原を後にする男たちが名残惜しんで振り返ったことから名付けられた「見返り柳」。題字の背景にこれを大きく描き、趣ある色調でセンス良く仕上げた絵は、takcom という制作会社によるものだ。石川氏の字とマッチして、作品の世界観を生み出した。


さて、以前『銀座百点』に掲載されていた氏のエッセイ「銀座の柳から上野の森へ」を読んだことがある。その内容は深く、不肖、私には一読では理解し得ないところがあり心に留め置いていたのだが、この度、この題字と合わせ見ることで、実感と共に読み解けたような気がした!


それは、エッセイ中の3つ目の視点「東アジアの書は西欧の音楽」である。
(エッセイでは言葉を尽くして説明しているところを、ここで短く綴るのは危険を伴うのだが、精一杯トライすると、、)

そこでは、欧米と東アジアのことばの構造の違いから、ことばに密接な関係がある文明や文化の違いを説く比較文化論的なことを語っている。

欧米のことば、、アルファベットの文化圏は、声(発声)で成り立つため、声の延長線上に生まれた交響曲、歌劇などの音楽は、文明や文化の根底に居座っている と説く。
一方で、日本語に見られる「異字同義語」、、例えば「こうえん」が「公園」だったり「講演」だったり。つまり、東アジアの漢字文明圏の言語は、声(音声)の言語ではなく、文字(書字)の言語である。
このことから両者の違いを指摘し、
「東アジアの書は西欧の音楽に相当する次元の表現である」
と説く。
これらは、書や漢字などの文字に精通した氏ならばこその説得力があるわけだ。


ジョン・グラムさんが作曲したテーマ曲は、西洋の楽器で編成されたオーケストラによる魅力的な音楽だが、これをBGMに、『べらぼう』の題字は、石川氏の説く「漢字文化圏の書」は西洋の音楽に通じるという両者の表現が、タイトルの画面で美しく競演している。

そういうことか、、‼︎

さらにこれが美しい絵とも相まって、その3方面の力が、私たちを蔦重の夢の世界へといざなっているのである♡