数十年前、フランスのロスチャイルド家の夫人(ナディア)が、パリの元ダンサーから夫人になったという自伝を著し、来日してTV出演などされていた。明るくエネルギッシュで、とても前向きな方という印象だった。その自伝にも彼女の活力はみなぎっていて、当時興味深く読んだが、その中で、画家「ダリ」に触れている箇所があり、「ダリ夫妻はとてもお金にうるさかった」と、ずいぶんとハッキリ書かれていた!
彼女自身はパリ社交界でのオオモノだから、芸術家とも当然、交流があっただろうし、狭い社会でこそ流れる情報や感じ得る印象には、高い信憑性を感じたものだ。
私自身、ダリの絵は、グニャッとした時計で知られるあの「記憶の固執」など、数点の有名どころしか知らない程度ではあるが、上に向いたヒゲの彼の写真からも奇人な感じはしていた。別にそれは構わないが、ケチとなると、どうもネ?!
アーティストに対しての私の勝手な理想ではあるが、あまりオカネ儲けに走る芸術家は信用し難いところがあるので、ナディアの指摘で、ダリには少し幻滅した。以後、ダリ作品を目にするたびに、ちょっと複雑な気持ちになってたのよね!
この度、山田五郎さんのYouTube「ダリ」編を見て、その辺のところがかなりスッキリした。山田さんによれば、どうやらダリの強烈な奥さん(ガラ)の仕業とういことが分かったのだ。ガラの言いなりだったダリ!金儲け主義がダリ発信では無かったことを知り、長年のモヤモヤが晴れて、ちょっと嬉しかった。
守銭奴の奥さんのせいだったとしたら、マアしょうがないやねw
音楽家がミューズの天啓を受けて良い作曲をするのと同様、ダリにとってのミューズがガラとあらば、何をかいわんやww
側から見たら少々悪妻に見えても、先に旅立ったガラ亡き後、ダリは喪抜けの殻になったとの実話でも証明しているね。山田さんはその様子を、野村沙知代夫人亡き後の野村監督を例えにされていて、実にわかりやすかった。
part2「ルパン対奇人二面相」で、ダレという名で登場する奇人芸術家は、明らかにダリをもじっている。
作中のダレは、芸術至上主義と言ってしまえば少しカッコがつくが、裏の顔は、かなりヤバい狂気の人だ。作中、崖の上に立つ妙なアトリエは、山田さんの動画で分かったことからいくと、ニューヨーク万博で建ったダリ館の奇怪な外装にイメージが似ている。実際のダリは崖を多く描いたらしいから、このルパン作品は、かなりのダリ通が、それらを随所に散りばめて描いていると思う。
ダリ存命中、パリのシュールレアリスム界隈でも、ダリへの批判はあったらしいから、時代は下って、日本のアーティスト達にもそんな印象は共通しているのだろう。「ルパン対奇人二面相」では、ダレのことをずいぶんとアイロニカルに描いている。
というわけで、「ルパン三世」のコミカルでちょいグロな本作は、ダリに興味がある方には特に楽しめると思うよ。